乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

岡崎晴輝・木村俊道編『はじめて学ぶ政治学』

タイトル通り、初学者(学部下位年次生)向けの政治学入門書(教科書)である。政治学史上の古典・名著を紹介する形式をとりながら、政治学の基本概念を一通り学べるような工夫が施されている。「権力」「公共性」「ナショナリズム」「官僚制」など、全27章から構成されている。

何より評価すべきなのは、教科書として成功している点である。記述が平明であり、初学者でも躓かずに読み進めることができる。古典・名著の原文からの数々の引用も、古典・名著の世界への尊敬とあこがれを読者の心に育むことであろう。

僕自身が経済思想史の研究者であり、思考プロセスが似ているせいなのか、政治思想史の研究者(友人・知人も少なからず含まれている)の筆による章が読みやすく、啓発される機会も多かった。個人的には「政治Ⅰ」「政治Ⅱ」「平等」「立憲主義」「代議制」「市民教育」「国制」「歴史」といった章が特に魅力的に感じられた。単独の章として設けられていないが、(近年活発な議論が展開されている)「共和制」「共和主義」の解説に十分な分量が与えられていることにも好感が持てた。

良書である。

はじめて学ぶ政治学―古典・名著への誘い

はじめて学ぶ政治学―古典・名著への誘い

評価:★★★★☆