乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

堀尾輝久『人権としての教育』

新規担当科目「経済学特殊講義2(人権・教育・市場)」の講義ノート作成のために読んだ。この「特講2」はもともと人権問題を講じる科目なのだが、かつては工業経済学のTさんが恒常的な担当者で、部落産業との関連で講義されていた。一昨年度末にTさんが定年退…

辻信一『スロー・イズ・ビューティフル』

著者は文化人類学者。「スロー」をキーワードに、「効率性(スピード)」に象徴される現代社会に抗するライフスタイル――「低エネルギー・共生・循環型・平和非暴力のスローでビューティフルなライフスタイル」(p.242)――を模索している。本書がそのタイトルをも…

山田太一『異人たちとの夏』

先日読み終えたばかりの広井良典『ケアを問いなおす』で紹介されていたファンタジー(orホラー)小説。広井さんによれば、哲学的意味におけるターミナルケアとは、「たましいの帰っていく場所」としての「深層の時間」をともに確かめる営みである。そして、我…

藤野美奈子・西研『不美人論』

かつて上原専禄はまだ学部生だった愛弟子・阿部謹也に「(卒論は)どんなテーマでもかまわない」が「どんな問題をやるにせよ、それをやらなければ生きてゆけないというテーマを探すのですね」とアドバイスした。阿部『自分のなかに歴史を読む』の12-3ページに…

森岡孝二『粉飾決算』

70ページに満たないブックレットなので、一、二時間もあれば読み終えることができる。森岡さんの新著『働きすぎの時代』の書評を準備中なので、その関係で手に取った。森岡さんは現代資本主義と日本の企業システムに関する理論的な著作・翻訳を数多くものし…