乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

更新一時停止

単著執筆に集中するため、しばらくの間、更新を停止させていただきます。

岡崎晴輝・木村俊道編『はじめて学ぶ政治学』

タイトル通り、初学者(学部下位年次生)向けの政治学入門書(教科書)である。政治学史上の古典・名著を紹介する形式をとりながら、政治学の基本概念を一通り学べるような工夫が施されている。「権力」「公共性」「ナショナリズム」「官僚制」など、全27章から…

デヴィッド・ドゥグラツィア『動物の権利』

すでに採りあげたスティーガー『グローバリゼーション』*1と同じく、オックスフォード大学出版会の「一冊でわかる」シリーズ(very short introductionシリーズの日本語版)の中の一冊である。『グローバリゼーション』と同じく、いかにも教科書的な叙述で、退…

泉流星『僕の妻はエイリアン』

オーストラリア出張前に書店でたまたま目に留まって購入し、出張先に持参した。帰りの飛行機の中で読み始めたら、あまりに面白くて、そのまま一気に最後まで読んでしまった。本書は高機能自閉症者の「妻」と普通の人である「夫」とのちぐはぐな夫婦生活をユ…

井上一馬『「マジっすかぁ?」を英語で言うと』

オーストラリア出張(7月7〜13日)の際に持参して、暇を見つけるたびに読んでいた。日本の大学(生)とオーストラリアの大学(生)との文化的な違いなどについて現地の研究者と話そうとする時、つい使いたくなる便利な表現が厳選されていて、とても助かった。「い…

河合隼雄『無意識の構造』

同じ著者による『コンプレックス』*1の姉妹書と言ってよいもので、前半は『コンプレックス』の圧縮版となっている。ただ、力点の置かれ方が違っていて、本書ではコンプレックスにはわずかしか触れられず、普遍的無意識(元型)に後半の多くのページが割かれて…

エーリッヒ・フロム『愛するということ』

僕が担当している学部ゼミでは、ここ数年、「脱常識の社会経済学――あたりまえを問いなおす――」をテーマに掲げてゼミ生を募集している。ゼミの募集要項には以下のように記してある。「なぜ勉強しなければならないのか? 大学で何を学ぶべきなのか? 何のため…