乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2007-12-01から1ヶ月間の記事一覧

荒井千暁『職場はなぜ壊れるのか』

「産業医が見た人間関係の病理」という副題が付されている。産業医として職場を見つめ続けてきた立場から、成果主義が職場の人間関係にどれほど大きな軋轢をもたらすかを告発している・・・一見したところ、そのような内容の本に見える。しかし、じっくり読…

冷泉彰彦『「関係の空気」「場の空気」』

「空気」をキーワードとして展開される卓抜な日本文化論である。山本七平『空気の研究』に多くを依拠しつつも、日本語教師としての経験を活かして、「空気」の形成と日本語の特質(婉曲表現、略語・造語などの多用)との関連を深く掘り下げたことは、著者のオ…

加藤諦三『だれにでも「いい顔」をしてしまう人』

6期ゼミ生自らがテキストとして選んだもの。著者は有名な心理学者で、これまでも多くの一般向けエッセイを発表している。本書もそうした類いの一冊である。誰もが「嫌われたくない」「嫌われるのが怖い」という感情を持っているはずだ。しかし、自分を過度に…

香山リカ『〈じぶん〉を愛するということ』

今やワイドショーのコメンテーターとしても売れっ子の精神科医・香山リカさん。最近の香山さんの著作はすらすら読め進められるものが大半だが、8年前(1999年)に出版された本書は、香山さんの著作の中では比較的初期のもので、やや読みづらい部類に属する。*1…

つげ義春『無能の人・日の戯れ』

全体の半分以上を占める「無能の人」は、やることなすことがすべて裏目に出てしまう売れない中年漫画家と、彼に翻弄される家族を描いた連作。竹中直人監督・主演で映画化もされた(見ていないけど)。この漫画の好意的読者の大半は男性であるような気がする。…

堺屋太一『団塊の世代』

日本の戦後ベビーブーマー(1947〜49年生まれ)は「団塊の世代」と呼ばれるが、その名前の由来となったのが、ベストセラーとなった本書である。著者の堺屋太一は元通産官僚(1978年に退官)。本書が単行本として公刊されたのは1976年11月で、それに先立って1975…