全体の半分以上を占める「無能の人」は、やることなすことがすべて裏目に出てしまう売れない中年漫画家と、彼に翻弄される家族を描いた連作。竹中直人監督・主演で映画化もされた(見ていないけど)。
この漫画の好意的読者の大半は男性であるような気がする。すべての男性が多かれ少なかれ「稼げないこと(→無力さ)」への恐怖を持っているだろうし。そして、この漫画は読み手の精神状態を選ぶような気がする。少なくとも僕はそうだ。どうしようもなく自分の無力さを感じて凹んでしまった時、つい手が伸びてしまう作品だ。無力な主人公と無力な自分自身とが重なり合う。そこに共感が生まれるせいだろうか、溜め息が漏れ、ますます落ち込むのに、最後はどこか救われたような気分になっている自分がいる。*1
そんな不思議な作品だ。
- 作者: つげ義春
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1998/03/02
- メディア: 文庫
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評価:★★★★☆