乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

古厩忠夫『裏日本』

本書に関しては、amazon.co.jpの読者レヴューの質が非常に高くて、それ以上付け加えるべきことがほとんど思い浮かばない。ぜひそれらを参照してもらいたい。それらと内容的に重なってしまうけれども、自分のためのメモを残しておくことにする。本書は、新潟…

諸富祥彦『孤独であるためのレッスン』

8期ゼミのテキスト。本書が選ばれたそもそものきっかけは、8期生HYSさんが「『ランチメイト症候群』をテーマにゼミをやってみたい」と提案してきたこと。「ランチメイト症候群」とは、お昼を一緒に食べる相手がいないと、その孤独に耐えられず、恐れや不安を…

森真一『ほんとはこわい「やさしさ社会」』

8期ゼミのテキストとして読んだ。「やさしさ」が対人関係のルールとして最優先されているために、逆説的に、「しんどさ」と「こわさ」に満ちてしまっている現代日本社会。本書はその逆説のメカニズムを社会学の手法で明らかにしている。著者によれば、「やさ…

伊丹敬之『創造的論文の書き方』

本書は論文・レポートの書き方についての「マニュアル」「ノウハウ本」では断じてない。「研究者の仕事=創造的な論文を書くこと」を前提としつつ、創造的な論文の本質的要件を考察することを通じて、研究者(社会科学者)に必要とされる心がけ(研究者とし…

安部徹也『メガヒットの「からくり」』

企業が行っているマーケティングや商品開発に関する本は、あくまで趣味の読書の域を出ないけれども、比較的たくさん読んでいるほうだと思う。「この商品の大ヒットの裏にはこんな涙ぐましい努力があったのか!」と感嘆させられることが多い。結果だけ見れば…

田中央『商品企画のシナリオ発想術』

7期ゼミのテキスト。富士写真フイルム*1在職中に「写ルンです」のコンセプト開発に携わった著者が、シナリオライティングによる商品企画の発想技法を、豊富な事例にもとづきながら、初心者にもわかりやすく解説する。本書のキーワードは、「三不(不満・不安…