乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

池田清彦『科学はどこまでいくのか』

高校生向きに書かれた科学史・科学論入門。名著・岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門 (岩波ジュニア新書)』(岩波ジュニア新書)の姉妹図書(科学版)と言えるだろう。前半では主として科学史にウェイトが置かれている。プラトンとアリストテレスの相違、ニュートンと…

鈴木敏文・齋藤孝『ビジネス革新の極意』

我が国の流通業界の頂点に君臨する敏腕経営者と、ベストセラー『声に出して読みたい日本語』の著者である異能の国語教育学者との対談。意外な組み合わせに、否が応でも期待は高まる。対談は大成功だったと評価できる。二人の著書をすでに何冊も読破している…

プラトン『饗宴』

2006年度前期「キノハチ研究会(哲学古典読書会)」のテキスト。研究会では、久保勉訳(岩波文庫)を用いたが、訳文に古さを感じさせる箇所も少なくなく、森新一訳(新潮文庫)も適宜参照した。森訳のほうが訳文は現代的だが、注・解説は久保訳のほうがはるかに充…

福田誠治『競争しなくても世界一 フィンランドの教育』

15歳を対象にした「経済協力開発機構(OECD)生徒の学習到達度調査」(PISA2003)において総合トップの成績をおさめたことで、にわかに世界中から注目を集めるようになったフィンランド。最近我が国でも数多くの関連書物が翻訳され、書店に出回っている。本書は…

伊藤守『コミュニケーションはキャッチボール』

成長を続ける幸福な組織がある一方で、衰退の危機に瀕している不幸な組織もある。今や組織の命運を分ける一番の鍵は社員間のコミュニケーションである。本書はコミュニケーション本質を(「言葉」ではなく!)「気持ち」のキャッチボールになぞらえ、ビジネス…

黒崎誠『世界を制した中小企業』

一般には無名だが技術力やシェアで世界最高レベルにある「小さな世界一企業」38社*1を紹介している。 こういったきわめて優秀な中小企業が世間にあまり知られていないのは、つくっているのが精密機器や電子機器の部品といった一般消費者の目に触れないもので…