乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

関満博『現場主義の知的生産法』

地域産業論・中小企業論を専門とする著者が、フィールドワークの技法を説き明かす。「知的生産法」というタイトルはミスリードかもしれない。本書の力点は技法そのものにはない。著者が繰り返し力説するのは、地域(現場)への愛情である。現地調査は決して…

矢吹晋『文化大革命』

オーストラリア出張の復路フライトで一気に読んだ。現代中国を語ろうとする際に避けては通れない「文化大革命」(1966〜76)の理想と現実が、コンパクトにまとめられている。中国史の勉強を再開してから日が浅いし、もともと持っていた知識も学部レベルの域…

城山三郎『無所属の時間で生きる』

オーストラリア出張の往路フライトで一気に読んだ。我が国の経済小説のパイオニアによるエッセイ集。収録されている36本のエッセイは、「無所属の時間を生きる」というタイトルで、雑誌『一冊の本』(朝日新聞社)に連載されたもの(1996年4月号〜1999年3月…

毛沢東『毛沢東語録』

周知のように、文化大革命は毛沢東思想を理論的支柱としている。その思想(革命精神)を国民一人一人が反復学習によって身につけるために、毛沢東の言葉(格言・警句・名言など)がテーマ別に一書にまとめられた。それが本書である。文化大革命時代の映像で…

藤子不二雄A『劇画 毛沢東伝』

毛沢東の波乱に満ちた半生(1949年の中華人民共和国建国まで)を劇画化したもの。作者はあの藤子不二雄Aである。もともとは1970年から71年にかけて『週刊漫画サンデー』に連載・単行本化されたもので、2003年に約30年ぶりに復刻された。1970年と言えば、毛…

三浦展『「家族」と「幸福」の戦後史』

今ではベストセラー『下流社会』の著者として有名なマーケティング・アナリストの比較的初期(10年前、1999年)の作品である。アメリカ的豊かさの象徴たる「郊外」的なライフスタイルと価値観が戦後(高度経済成長)期日本にどのように普及し動揺したのかを…