毛沢東の波乱に満ちた半生(1949年の中華人民共和国建国まで)を劇画化したもの。作者はあの藤子不二雄Aである。もともとは1970年から71年にかけて『週刊漫画サンデー』に連載・単行本化されたもので、2003年に約30年ぶりに復刻された。
1970年と言えば、毛沢東はまだ存命であり、しかも中国は文化大革命の最中。毛沢東があまりにもヒーロー的に描かれ、他方、蒋介石があまりにもヒール的に描かれているのは、時代の制約として仕方のないところだろう。
都市・労働者中心の革命路線に固執する党中央に抗って、中国社会の現状に即した農村・農民中心の革命路線を打ち出し、人民の支持を集めてゆく毛沢東の姿がたいへん魅力的・説得的に描かれている。ただ、盟友朱徳はなぜ毛沢東の命に背いてチベットに向かったのか? 長征の成功で本書は終わっているけれども、それと中華人民共和国建国の誕生の関係は? ところどころ、もう少し詳しく描いて欲しい場面があった。
文化大革命の悲惨な結末を知っている我々は、本書に描かれていない毛沢東のもう一つの顔を無視するわけにゆかない。ただ、1970年という時代に毛沢東がどのように見えて(語られて)いたのか、本書はそれを追体験するための格好の資料であるはずだ。
- 作者: 藤子不二雄A
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2003/01/01
- メディア: 単行本
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