乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

キム・ジョンキュー『英語を制する「ライティング」』

韓・日・英の3か国語を自由自在に操るハーバード大卒の韓国人ビジネスマンが日本語で書いた「最強の英語習得法」指南書。真の英語力とは何か? 著者によれば、それは「書く」力である。「話す」「聞く」「読む」といった他のスキルは、「書く」能力の副産物…

阿部謹也『北の街にて』

故・阿部謹也さんの小樽時代の回想記。このたび僕が読んだのは1995年に公刊されたハードカヴァーだが、現在は『北の街にて―ある歴史家の原点 (洋泉社MC新書)』との表題(副題が追加)で洋泉社から新書として再刊されている。阿部さんは1965年に小樽商科大学…

城山三郎『花失せては面白からず』

我が国の経済小説のパイオニア・城山三郎さんは、もともと、愛知学芸大学で教鞭をとっていた経済学者(「景気論」担当)・杉浦英一(本名)であった。その城山さんの学生(一橋大学)時代のゼミナールの指導教員が理論経済学の山田雄三教授(福田徳三の弟子…

池田清彦『環境問題のウソ』

2009年2月16日現在、amazon.co.jpには何と40本ものレヴューが本書に対して寄せられている。星5つが12本、4つが13本、3つが4本、2つが3本、1つが8本。毀誉褒貶相半ばする問題作の様相を呈している。しかし、当たり前のことかもしれないが、評する側がもともと…

根井雅弘『経済学はこう考える』

僕は根井氏の著作の熱心な読者でない。30冊を優に超える著作の中で僕が読むことのできたのは10冊程度である。そのことをあらかじめお断りした上で、大雑把な感想を記させていただく。本書はこれまで根井氏が書かれた作品の中で最も良質なものの一つであるよ…

秋山をね・菱山隆二『社会責任投資の基礎知識』

「社会責任投資(SRI:Socially Responsible Investment)」*1とは、企業を収益性ばかりでなく倫理性(法令遵守・環境への配慮・人権への配慮・雇用確保・情報開示の透明性など)からも評価して、倫理的に「誠実な企業」を投資を通じて応援していこうとする活…

鷲田清一『京都の平熱』

「京都に復帰したら最初に読もう」と前々から決めていた。良かった。すごく良かった。哲学者・鷲田清一さん*1が自分の生まれ育った京都の街を(市内中心部を一周する)市バス206系統に乗って案内してくれる。名所やグルメの案内ではない。沿線の「平熱(日常…