乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

納富信留『プラトン』

本文100ページ程度の小著。しかもタイトルはそのものズバリ『プラトン』。しかし、簡便な入門書・解説書を期待して読み始めると、見事に裏切られる。著者自らが「あとがき」で記しているように、「異端の本」(p.118)である。 ここでは。プラトン哲学の解説書…

ポール・ストラザーン『90分でわかるプラトン』

こちらは正真正銘の超初学者向けプラトン入門書。植村光雄『哲学のえほん』の次のステップに手を出すべき本だろうか。本当に90分で読み終えることができる。本文は60ページ足らず。もちろん多くは望めない。プラトンの著作で言及されているのは、わずかに『…

竹田青嗣『プラトン入門』

書名と外観(新書)に騙されてはいけない。本書は入門書・啓蒙書の枠に収まりきらない。一人の在日思想家が自身の世界観を真摯に綴った思想書として読まれるべきである。「人間には言葉を通して他者との共通の理解や共感を見出したいという本源的欲望が備わっ…

S.コリーニ/D.ウィンチ/J.バロウ『かの高貴なる政治の科学』

前回の更新から日数がかなり空いてしまったが、決して読書をサボっていたわけではない。むしろ僕の人生でも一、二を争うほどの高密度で読書に励んでいた。なぜ更新できなかったかのかと言えば、二月後半から三月末までをフルに費やして、重厚で難解な大著二…