乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

山中優『ハイエクの政治思想』

畏友山中さんの第一作をこのたび機会あって再読した。『隷従への道』から『自由の条件』を経て後年の『法・立法・自由』『致命的な思い上がり』にかけてのハイエクの議論を丁寧に読み解き、その力点の変化(義務論から帰結主義へ、帰結主義的義務論から義務…

正高信男『いじめを許す心理』

4回生(10期生)のTさんがいじめをテーマに卒論を書くというプランを提出していたので*1、指導者としての責任上、少しは勉強しておこうと思い、本書を手に取った。本書の主題は「なぜ、いじめが成立するのか」のメカニズムを解きほぐすことにある。より具体…

宇都宮浄人『鉄道復権』

欧州では、この二十年来、自動車に交通シェアを奪われてきた鉄道が見直され、高速鉄道の導入やLRT(次世代型路面電車)の拡大などによって大いなる復権をとげている。他方、日本の鉄道は、赤字のローカル線が次々と廃止されていることに象徴されるように、ジ…