乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

茂木健一郎・田中洋『欲望解剖』

「欲望とマーケティング」をテーマに、売れっ子脳科学者(茂木)の論考が第1章に、元電通マン(田中)の論考(エッセイと呼ぶほうが正確かもしれない)が第2章に、両者による対談が第3章に収めている。150ページにも満たない小著であり、文体も平易。専門用語には…

日本経済新聞社編『働くということ』

2003年4月から2004年8月まで日本経済新聞紙上で連載された「働くということ」を、加筆・修正・再構成を施して一冊の本としてまとめたものである。豊かな社会に突入した日本では、「生活の糧を得るため」という旧来の労働観は過去のものになってしまった。働…

東郷正延『ロシア語のすすめ』

中澤英彦『はじめてのロシア語』 *1の旧バージョンと言えばよいだろうか。同じ講談社現代新書のラインアップ中の一冊である。amazon.co.jpには肯定的な評価が一つ載せられているが、僕にとって1966年初版の本書はさすがに古すぎた。旧ソ連時代の話題が含まれ…

伊豫谷登士翁『グローバリゼーションとは何か』

現代はグローバリゼーションの時代だとしばしば言われるが、いざこの語の意味の説明を求められれば、誰しも戸惑うのではないだろうか。実際、この語の意味するところはあまりに多様かつ錯綜しており、何らかの共通了解が論者の間に存するわけではない。本書…

香西秀信『論争と「詭弁」』

修辞学(レトリック)とは、本質的には、黒を白と言いくるめてしまうような危険で狡猾な技術である。本書は修辞学のそのような邪悪な本性を物語る4つのエピソードを紹介した「闇の修辞学史」(p.14)である。これまで修辞学関係の本はほとんど読んだことがない。…