乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

植村光雄『哲学のえほん』

著者は河合塾世界史科講師。帯には「宇宙一、やさしい!」とある。プラトン、デカルト、カント、マルクス、サルトルの哲学のエッセンス――「イデア」「われ思う、ゆえにわれあり」「自由」「労働からの疎外」「実存は本質に先立つ」――を絵本形式で解き明かそ…

丹羽宇一郎・伊丹敬之『まずは社長がやめなさい』

伊藤忠商事社長(当時)と気鋭の経営学者との熱血(毒舌?憂国?愛国?)対談。*1丁々発止、融通無碍な対談の内容を限られたスペースにまとめることは難しいが、あえて大胆にまとめるならば、二つの重心を指摘できる。一つはリーダー(エリート、考えるコア)の発…

三島憲一『ニーチェ』

本書は、amazon.co.jpのカスタマーレビューにおいて、「新書という分量・内容的に制約がある媒体であるにもかかわらず、ニーチェ思想の基本事項のみならずその思想史的意義まできっちり押さえられており、手堅い出来となっている」とか「竹田青嗣・須藤訓任…

山本容子(絵)・池内紀(文)『絵本ファウスト』

毎日出版文化賞を受賞した池内紀訳のゲーテ『ファウスト(全2冊)』(集英社)のダイジェスト版とも言える絵本。本来1万2千余行もある長大な物語を50ページ余りの絵本へと圧縮するのはやはり無理がある。この絵本だけでは『ファウスト』がどんな筋書きをもっ…

森永卓郎『リストラと能力主義』

目下テレビ画面に登場する頻度が最も高いエコノミストの一人が2000年に公刊した新書。以前に読んだベストセラー(『年収300万円時代を生き抜く経済学』)が内容空虚な「オヤジ本」だったので、本書にもさほど大きな期待をかけていなかったが、読んでみてびっく…