乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

佐伯啓思・柴山桂太編『現代社会論のキーワード』

頂きもの。落手してから3か月近くが過ぎてしまったが、夏休みを利用して、ようやく読み終えることができた。本書はポスト冷戦時代の現代社会を考えるうえで不可欠な15のキーワード――「新自由主義(ネオリベラリズム)」「ネオコン」「第三の道」「リベラル・…

黒川伊保子・岡田耕一『なぜ、人は7年で飽きるのか』

5月14日・28日の8期(3回生)ゼミでテキストとして使用したが、その後3か月以上も「乱読ノート」で採り上げられないままだった。その最大の理由は、本書が「トンデモ本」なのか否か、見極められずにいたから。このたび読み直してみたものの、やはりまだ見極…

新村美希『百貨店ガール』

日本橋高島屋ご案内係リーダーの奮闘記。自分が客として百貨店を訪れる際には当たり前に感じがちな彼女たちのサービスが、どれだけ涙ぐましい地道な日々の努力によって培われているかがよくわかる。どんな本でもそうだが、読むタイミングは大切だ。本書はと…

松原隆一郎『失われた景観』

僕は(エドマンド・バークに代表される)西洋保守思想を(経済思想史との関わりで)かれこれ十数年にわたって研究してきた。しかし、いざ「なぜ保守思想を研究するのですか?」「保守思想のどこに惹かれるのですか?」と問われると、答えに窮するところがあ…

ラース・マグヌソン『重商主義』

刮目の書。訳者のお一人であるK谷先生から賜った。感謝。まず、通俗的な重商主義理解を確認しておきたい。本書の内容は通俗的な重商主義像(およびそれをめぐるその後の研究状況)に対して根本的反省を迫っているからである。アダム・スミスは、『国富論』第…

松原隆一郎『金融危機はなぜ起きたか?』

本書も前著『経済学の名著30』*1同様に著者ご本人から賜った。感謝。著者自身が「まえがき」で書いているように、本書は前著の応用編として、経済思想史から眺めてみた金融危機と日本経済の光景を描こうとするものである。本書を構成する4つの章はもともと独…

松原隆一郎『経済学の名著30』

著者ご本人から賜った。感謝。経済学史上の名著・代表的理論を解説した本はすでに数多く出版されているが、本書は類書と一線を画す個性を放っている。論壇で現代社会に対する活発な発言を続けてきた著者らしく、経済理論を初学者にもわかりやすく解説する際…

山田昌弘・白河桃子『「婚活」時代』

今や日本中のほとんど誰もが知っている流行語「婚活」。そのきっかけとなったのが本書である。十数万部を数えるベストセラーとなっている。法政大学後藤ゼミとの合同ゼミで、法政さんのプレゼンのテーマが「婚活」だったために、予習を兼ねて手に取った次第…