乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

阿部謹也『大学論』

著者は言わずと知れたドイツ中世史研究の大家。2006年に惜しまれつつご逝去された。僕はその著作を学部・院生時代に好んで読んだ。特に『自分のなかに歴史をよむ』という著作が大好きで、大学教員として教壇に立った最初の年(1998年)、1年生配当の入門科…

姜尚中『在日』

本書は、在日コリアン二世である著者の自伝であり、著者自身の言葉を借りるならば、「ひとりの「在日」二世の誕生と成長、ためらいと煩悶の歴史」(p.228)を綴ったものである。この種の本は著者の望むように読まれない場合のほうが多いのではないか。著者自身…

城山三郎『部長の大晩年』

正月休みを利用して一気に一日で読み終えた。経済小説の大家が手がけた俳人・永田耕衣(1900-97)の評伝である。僕の俳句への造詣はほぼ無に等しく、永田の名前も本書を手に取るまで知らなかった。そんな僕が本書を手に取ったきっかけは、城山作品であり、し…