乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

城山三郎『官僚たちの夏』

組織の中の人間の生々しい姿を描き続けた経済小説の第一人者城山三郎氏が去る3月22日に亡くなられた。79歳。東京商大(現一橋大)卒業後、愛知学芸大(現愛知教育大)の教員(景気論・経済原論担当)を経て、小説家へと転身した。かつて記したことがあるのだが*1…

古沢由紀子『大学サバイバル』

出版社は異なるが、すでに採り上げた『潰れる大学、潰れない大学』*1の姉妹書と言ってよいだろう。公刊時期はわずか5ヶ月違い(本書のほうが早い)で、共著と単著の違いこそあれ、同じ読売新聞記者の筆によるものだ。同一新聞で取材時期も近いこともあり、内容…

間宮陽介『丸山真男』

『増補 ケインズとハイエク―“自由”の変容 (ちくま学芸文庫)』を読み終わり、「そのついでに」とばかりに軽い気持ちで読み始めたのだが、そのあまりに浩瀚で刺激的な内容に圧倒された。丸山本来の問題意識をテキストの丹念な読解を通じて再構成し(pp.78-80)、…

読売新聞大阪本社編『潰れる大学、潰れない大学』

以前に潮木守一『世界の大学危機―新しい大学像を求めて (中公新書)』をこの「乱読ノート」でとりあげたことがあるが*1、本書は日本の大学危機の現状を、各大学の様々な改革への取り組みを紹介しつつ、レポートしたものである。読売新聞の連載記事が元になっ…

間宮陽介『増補 ケインズとハイエク』

本書はもともと中公新書の一冊として1989年に公刊されたもので、知る人ぞ知る名著でありながら、長らく絶版状態が続いていた。このたび増補改訂され、ちくま学芸文庫の一冊として復刊された。ケインズとハイエクの関係については、「実践家vs理論家」あるい…