乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

樋口陽一『憲法と国家』

著者は比較憲法学の第一人者。「著者としては、この本に、アクチュアルな同時代の問題に即した、ひとつの「比較憲法入門」としての役割をも託したつもりである」(p.206)とのこと。1999年に刊行された本書だが、8年たった今ごろに手に取った理由は、つい先日…

山田昭男『楽して、儲ける!』

岐阜県の中堅電設資材メーカー「未来工業」は、僕がここ数年いちばん注目している企業の一つだ。この会社は日本一労働時間が短い会社として知られている。残業ゼロ。完全週休二日はもちろんとして、それに加えて年末年始休暇は19日間、GWは10日間、夏期休暇…

筑紫哲也『スローライフ』

5期ゼミのテキスト。ゼミ生が自分で選んだ。著者は言わずもがなの超有名ジャーナリスト。生きることの真の意味を「スロー」という言葉に托しつつ、訪れた世界各地、日本各地で見つけた「スローライフ(ゆったりとした生)」をとらわれない自由な筆致で紹介して…

橘木俊詔『格差社会』

格差問題の第一人者による啓蒙的な入門書。4期ゼミと森岡ゼミとの対抗ゼミ(2006年12月、共通テーマ「格差社会」)の準備の過程で読んだ。昨年11月に一度通読しているのだが、その時は多忙にかまけて「乱読ノート」へのアップを怠った。このたび改めて通読し本…

東谷暁『金より大事なものがある』

著者は保守系の経済ジャーナリスト。本書は金融規制緩和の負の側面を豊富な具体的を用いて徹底的に暴き出したルポである。小泉政権下で強力に推進された金融規制緩和によって、すべてを株価だけで評価するアメリカ型ファンド資本主義の病理が日本にも蔓延し…

伊藤元重『成熟市場の成功法則』

伊藤元重・東京大学教授と好調企業のトップ12人との対談集。月刊誌『Voice』(2004年6月〜2005年6月)の連載対談を一書にまとめたものである。伊藤氏は対談の名手である。対談相手が示してくれる現場の具体的なエピソードを瞬時に経済の基本原理と結び付けるそ…

荒瀬克己『奇跡と呼ばれた学校』

著者は京都市立堀川高等学校の校長。2001年に6人だった国公立大学現役合格者を2005年には30倍の180人に伸ばし、「堀川の奇跡」と呼ばれる公立高校改革を成功させた。その具体的実践を詳しく紹介している。本書は様々な読み方が可能だろうが、一大学教員であ…

只腰親和『「天文学史」とアダム・スミスの道徳哲学』

本書は「経済学方法論フォーラム」の共同メンバーでもある只腰さんが12年前に公刊されたスミス研究書である。スミスの道徳哲学(社会科学)研究の方法上の特質を、彼の学問論・知識論に着目しつつ――とりわけニュートンの天文学とロックの認識論との関連を重視…