乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

城山三郎・内橋克人『「人間復興」の経済を目指して』

作家・城山三郎(1927-2007)と経済評論家・内橋克人(1932- )との対談集。対談そのものは、2001年秋から2002年初春にかけて3回行われ、雑誌『論座』に掲載された。それが2002年4月に単行本としてまとめられ、2004年10月には文庫化された。僕が読んだのは文…

辻井喬『新祖国論』

辻井喬(堤清二)は、日野啓三と並んで、学生時代に最も惚れこんだ作家で、かつては新作が出るたびに貪るように読んでいた。僕にとって、日野作品のいちばんの魅力が、(無意識をも含めた広い意味での)意識の流れを言語化しようとする真摯で執拗な営みにあ…

木村雄一『LSE物語』

これも頂きもの。落手してから3か月以上が過ぎてしまったが、夏休みを利用して、ようやく読み終えることができた。ケンブリッジやオックスフォードと並ぶイギリスの社会科学系名門大学LSE(London School of Economics and Political Scinece)。オックスブ…

ロバート・ダーントン『パリのメスマー』

前々から読みたくてたまらなかった。ようやく読む機会を得た。本書の概要は冒頭の一節に端的に表現されているので、それをまず引用しておこう。 ルソーの『社会契約論』〔1762年刊〕は、フランスの大革命以前には彼の著作中でもっとも評判の低いものであった…