著者は河合塾世界史科講師。帯には「宇宙一、やさしい!」とある。
プラトン、デカルト、カント、マルクス、サルトルの哲学のエッセンス――「イデア」「われ思う、ゆえにわれあり」「自由」「労働からの疎外」「実存は本質に先立つ」――を絵本形式で解き明かそうとしている。この種の本はえてして「誇大広告」「羊頭狗肉」になりがちなのだが、本書は「看板に偽りなし」。本当に超わかりやすい。ゆっくり読んでも、15分もあれば読み終えることができる。そして、何度も読み返したくなる。読み返すたびに、言葉が放つ重層的なイメージがじわじわと脳内に染み入ってくる。「読む」のではなく「感じる」哲学書だ。
いずれの説明も本当によく練りこまれたものだが、とりわけプラトン、カント、サルトルの説明のうまさには感心した。本書は経済書ではないけれども、経済学部の開講科目である「経済学説史」「社会思想史」は哲学と密接な関係を有するという意味で、「落ちこぼれ経済学部生のための本棚」のラインナップにぜひとも加えたい一冊だ。
PHPは個性的な哲学入門書を作ることに長けている気がする。野矢茂樹『はじめて考えるときのように』も素晴らしい一冊だったことだし。
- 作者: 植村光雄
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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