乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

山本容子(絵)・池内紀(文)『絵本ファウスト』

毎日出版文化賞を受賞した池内紀訳のゲーテファウスト(全2冊)』(集英社)のダイジェスト版とも言える絵本。本来1万2千余行もある長大な物語を50ページ余りの絵本へと圧縮するのはやはり無理がある。この絵本だけでは『ファウスト』がどんな筋書きをもった物語なのかほとんど理解できない。子どもに読み聞かせることはできない。双頭に描かれたファウストには一瞬ドキッとさせられるし、淡い色彩が人間の弱さ、この世の儚さを象徴しているようで、画集としては魅力的だが、それでも税抜価格3,700円は高く感じる。「金返せ」とまでは言わないけどね。図書館には入れておいて欲しいから。それにしても、いったいどのような購買層を念頭に置いて企画された絵本なのだろうか?山本容子さんのコアなファンのためのコレクターズ・アイテム?

評価:★★☆☆☆

絵本ファウスト

絵本ファウスト