乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

井上一馬『「マジっすかぁ?」を英語で言うと』

オーストラリア出張(7月7〜13日)の際に持参して、暇を見つけるたびに読んでいた。日本の大学(生)とオーストラリアの大学(生)との文化的な違いなどについて現地の研究者と話そうとする時、つい使いたくなる便利な表現が厳選されていて、とても助かった。「いじられキャラ」(p.22)、「引きこもり」(p.29)、「いじめ」(p.174)、「空気が読めない」(p.183)といった表現が事前に頭に入っていたことで、ずいぶんと会話が弾んだ。日本語的な発想から完全に自由になれない僕のような中級者にとっては、純日本風の表現が平易な英語へと簡単に変換できるのを知ることは、非常に大きな意味があった。

やや古い(or 実際には使われていない)言い回しも幾分か含まれているようで、現地の人の話では、「あれは魔性の女だ。→She is a scarlet woman.」(p.138)はあまり使われておらず、「なんか、うさんくさくない、あの人?→He is kind of suspicious, isn’t he?」(p.136)の‘suspicious’は単に‘suss’と言うほうが多いとのこと。英語は生きているから、こういうズレが生じてしまうのは仕方がない。

言うまでもないことだが、この種の英会話学習本は通読することそれ自体に意味はない。一つ一つの表現をきちんと覚えて、使いこなせるようになって、初めて意味がある。だから僕はこの本をおそらく永遠に読了できないと言ってよいだろう。

英会話本なので、発音記号とアクセントの表示が欲しかった。

評価:★★★★☆