乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2019年1・2月の読書の記録

横綱 (講談社文庫)

横綱 (講談社文庫)

毛沢東 (Century Books―人と思想)

毛沢東 (Century Books―人と思想)

社会主義への挑戦 1945-1971〈シリーズ 中国近現代史 4〉 (岩波新書)

社会主義への挑戦 1945-1971〈シリーズ 中国近現代史 4〉 (岩波新書)

人禍 1958~1962―餓死者2000万人の狂気

人禍 1958~1962―餓死者2000万人の狂気

文化大革命と現代中国 (岩波新書)

文化大革命と現代中国 (岩波新書)

現代中国学―「阿Q」は死んだか (中公新書)

現代中国学―「阿Q」は死んだか (中公新書)

2018年11・12月の読書の記録

美のイデオロギー

美のイデオロギー

美学への招待 (中公新書)

美学への招待 (中公新書)

スタンダール (Century Books―人と思想)

スタンダール (Century Books―人と思想)

最後の恋文 天国のあなたへ

最後の恋文 天国のあなたへ

科学文明の負荷―等身大の生活世界の発見 (1985年)

科学文明の負荷―等身大の生活世界の発見 (1985年)

カント 世界の限界を経験することは可能か (シリーズ・哲学のエッセンス)

カント 世界の限界を経験することは可能か (シリーズ・哲学のエッセンス)

修辞の政治学―植民地インドの表象をめぐって (テオリア叢書)

修辞の政治学―植民地インドの表象をめぐって (テオリア叢書)

2018年9・10月の読書の記録

崇高の美学 (講談社選書メチエ)

崇高の美学 (講談社選書メチエ)

悲しみよ こんにちは (新潮文庫)

悲しみよ こんにちは (新潮文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

魂の経営

魂の経営

イギリス美術 (岩波新書)

イギリス美術 (岩波新書)

崇高と美の観念の起原 (みすずライブラリー)

崇高と美の観念の起原 (みすずライブラリー)

白鵬伝

白鵬伝

化粧せずには生きられない人間の歴史 (講談社現代新書)

化粧せずには生きられない人間の歴史 (講談社現代新書)

2018年7・8月の読書の記録

大人のための国語ゼミ

大人のための国語ゼミ

「飢餓」と「飽食」―食料問題の十二章 (講談社選書メチエ (20))

「飢餓」と「飽食」―食料問題の十二章 (講談社選書メチエ (20))

はじめての人のための経済学史 (経済学叢書Introductory)

はじめての人のための経済学史 (経済学叢書Introductory)

ゴシック小説をよむ (岩波セミナーブックス (78))

ゴシック小説をよむ (岩波セミナーブックス (78))

犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書)

犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書)

なぜ日本人は学ばなくなったのか (講談社現代新書 1943)

なぜ日本人は学ばなくなったのか (講談社現代新書 1943)

言論の自由―アレオパヂティカ (1953年) (岩波文庫)

言論の自由―アレオパヂティカ (1953年) (岩波文庫)

ポパー―批判的合理主義 (現代思想の冒険者たち)

ポパー―批判的合理主義 (現代思想の冒険者たち)

2018年5・6月の読書の記録

子どもの難問

子どもの難問

間テクスト性の戦略 (NATSUME哲学の学校)

間テクスト性の戦略 (NATSUME哲学の学校)

飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)

飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)

クリステヴァ―ポリロゴス (現代思想の冒険者たち)

クリステヴァ―ポリロゴス (現代思想の冒険者たち)

健康売ります―イギリスのニセ医者の話 1660‐1850

健康売ります―イギリスのニセ医者の話 1660‐1850

2018年3・4月の読書の記録

「帝国」化するイギリス―17世紀の商業社会と文化の諸相

「帝国」化するイギリス―17世紀の商業社会と文化の諸相

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

歴史修正主義とサブカルチャー (青弓社ライブラリー)

歴史修正主義とサブカルチャー (青弓社ライブラリー)

2018年1・2月の読書の記録

教室内(スクール)カースト (光文社新書)

教室内(スクール)カースト (光文社新書)

現代中国入門 (ちくま新書1258)

現代中国入門 (ちくま新書1258)

東大教授 (新潮新書)

東大教授 (新潮新書)

人間交際術 (智恵の贈り物)

人間交際術 (智恵の贈り物)

2017年1~12月の読書の記録

思い出せる範囲で・・・

新版 論文の教室 レポートから卒論まで (NHKブックス)

新版 論文の教室 レポートから卒論まで (NHKブックス)

  • 作者:戸田山 和久
  • 発売日: 2012/08/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

わけあり記者

わけあり記者

  • 作者:三浦 耕喜
  • 発売日: 2017/06/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

  • 作者:魚住 昭
  • 発売日: 2006/05/16
  • メディア: 文庫

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

記憶はウソをつく (祥伝社新書 177)

記憶はウソをつく (祥伝社新書 177)

ロック倫理学の再生

ロック倫理学の再生

2016年1~12月の読書の記録

思い出せる範囲で・・・

ミルトン (CenturyBooks―人と思想)

ミルトン (CenturyBooks―人と思想)

ユートピアだより (岩波文庫)

ユートピアだより (岩波文庫)

ウィリアム・モリスのマルクス主義 アーツ&クラフツ運動の源流 (平凡社新書)

ウィリアム・モリスのマルクス主義 アーツ&クラフツ運動の源流 (平凡社新書)

日中国交正常化 - 田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦 (中公新書)

日中国交正常化 - 田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦 (中公新書)

新左翼とロスジェネ (集英社新書)

新左翼とロスジェネ (集英社新書)

経済学の哲学 - 19世紀経済思想とラスキン (2011-09-25T00:00:00.000)

経済学の哲学 - 19世紀経済思想とラスキン (2011-09-25T00:00:00.000)

新左翼とは何だったのか (幻冬舎新書)

新左翼とは何だったのか (幻冬舎新書)

I LOVE 過激派

I LOVE 過激派

小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか (中公新書)

小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか (中公新書)

この最後の者にも・ごまとゆり (中公クラシックス)

この最後の者にも・ごまとゆり (中公クラシックス)

意思決定力

意思決定力

ケインズの哲学

ケインズの哲学

天才 (幻冬舎文庫)

天才 (幻冬舎文庫)

文学部がなくなる日 (主婦の友新書)

文学部がなくなる日 (主婦の友新書)

再生産の歴史人類学―1300~1840年英国の恋愛・結婚・家族戦略

再生産の歴史人類学―1300~1840年英国の恋愛・結婚・家族戦略

イギリス個人主義の起源―家族・財産・社会変化

イギリス個人主義の起源―家族・財産・社会変化

資本主義の文化―歴史人類学的考察 (NEW HISTORY)

資本主義の文化―歴史人類学的考察 (NEW HISTORY)

イギリスと日本―マルサスの罠から近代への跳躍

イギリスと日本―マルサスの罠から近代への跳躍

家族・性・結婚の社会史―1500年‐1800年のイギリス

家族・性・結婚の社会史―1500年‐1800年のイギリス

物語オーストラリアの歴史―多文化ミドルパワーの実験 (中公新書)

物語オーストラリアの歴史―多文化ミドルパワーの実験 (中公新書)

オーストラリア6000日 (岩波新書)

オーストラリア6000日 (岩波新書)

オーストラリア―多文化社会の選択 (岩波新書)

オーストラリア―多文化社会の選択 (岩波新書)

オーストラリア入門

オーストラリア入門

伝統主義と文明社会: エドマンド・バークの政治経済哲学

伝統主義と文明社会: エドマンド・バークの政治経済哲学

戦後日本の社会思想史 近代化と「市民社会」の変遷

戦後日本の社会思想史 近代化と「市民社会」の変遷

アダム・スミスを語る (Minerva21世紀ライブラリー)

アダム・スミスを語る (Minerva21世紀ライブラリー)

西洋から西欧へ

西洋から西欧へ

失楽園 (まんがで読破 96)

失楽園 (まんがで読破 96)

神曲 (まんがで読破)

神曲 (まんがで読破)

2009~15年の読書の記録

思い出せる範囲で・・・

新書376ゼロからわかる民法 (平凡社新書)

新書376ゼロからわかる民法 (平凡社新書)

市民社会とは何か (平凡社新書)

市民社会とは何か (平凡社新書)

ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書)

ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書)

無料ビジネスの時代: 消費不況に立ち向かう価格戦略 (ちくま新書)

無料ビジネスの時代: 消費不況に立ち向かう価格戦略 (ちくま新書)

僕らの憲法学―「使い方」教えます (ちくまプリマー新書)

僕らの憲法学―「使い方」教えます (ちくまプリマー新書)

個人と国家 ―今なぜ立憲主義か (集英社新書)

個人と国家 ―今なぜ立憲主義か (集英社新書)

憲法への招待 新版 (岩波新書)

憲法への招待 新版 (岩波新書)

銃に恋して 武装するアメリカ市民 (集英社新書)

銃に恋して 武装するアメリカ市民 (集英社新書)

市民と武装  ―アメリカ合衆国における戦争と銃規制

市民と武装 ―アメリカ合衆国における戦争と銃規制

国家は僕らをまもらない―愛と自由の憲法論 (朝日新書 39)

国家は僕らをまもらない―愛と自由の憲法論 (朝日新書 39)

ケインズの経済思考革命―思想・理論・政策のパラダイム転換

ケインズの経済思考革命―思想・理論・政策のパラダイム転換

ケインズ

ケインズ

なにがケインズを復活させたのか?

なにがケインズを復活させたのか?

資本主義の革命家 ケインズ

資本主義の革命家 ケインズ

ケインズの思想―不確実性の倫理と貨幣・資本政策

ケインズの思想―不確実性の倫理と貨幣・資本政策

ケインズの闘い―哲学・政治・経済学・芸術

ケインズの闘い―哲学・政治・経済学・芸術

ケインズ

ケインズ

保守とは何だろうか (NHK出版新書)

保守とは何だろうか (NHK出版新書)

就活エリートの迷走 (ちくま新書)

就活エリートの迷走 (ちくま新書)

1分で大切なことを伝える技術 (PHP新書)

1分で大切なことを伝える技術 (PHP新書)

自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう

勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい (光文社新書)

勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい (光文社新書)

小さいけれどみんなが好きになる モテる会社

小さいけれどみんなが好きになる モテる会社

砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日

砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日

「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる

「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる

新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか?

新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか?

負けかたの極意

負けかたの極意

未来のスケッチ 経営で大切なことは旭山動物園にぜんぶある

未来のスケッチ 経営で大切なことは旭山動物園にぜんぶある

もの食う人びと (角川文庫)

もの食う人びと (角川文庫)

伝わる・揺さぶる! 文章を書く (PHP新書)

伝わる・揺さぶる! 文章を書く (PHP新書)

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

友だち地獄 (ちくま新書)

友だち地獄 (ちくま新書)

人間精神進歩史 第1部 (岩波文庫 青 702-2)

人間精神進歩史 第1部 (岩波文庫 青 702-2)

人間精神進歩史 第2部 (岩波文庫 青 702-3)

人間精神進歩史 第2部 (岩波文庫 青 702-3)

自由の条件I ハイエク全集 1-5 【新版】

自由の条件I ハイエク全集 1-5 【新版】

自由の条件II ハイエク全集 1-6 【新版】

自由の条件II ハイエク全集 1-6 【新版】

自由の条件3 ハイエク全集 1-7 新版

自由の条件3 ハイエク全集 1-7 新版

ハラスメントは連鎖する 「しつけ」「教育」という呪縛 (光文社新書)

ハラスメントは連鎖する 「しつけ」「教育」という呪縛 (光文社新書)

生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 (NHKブックス)

生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 (NHKブックス)

経済学の歴史

経済学の歴史

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)

功利と直観―英米倫理思想史入門

功利と直観―英米倫理思想史入門

功利主義入門―はじめての倫理学 (ちくま新書)

功利主義入門―はじめての倫理学 (ちくま新書)

本当の経済の話をしよう (ちくま新書)

本当の経済の話をしよう (ちくま新書)

今こそルソーを読み直す (生活人新書)

今こそルソーを読み直す (生活人新書)

実務家ケインズ (中公新書)

実務家ケインズ (中公新書)

検索バカ (朝日新書)

検索バカ (朝日新書)

新祖国論 なぜいま、反グローバリズムなのか

新祖国論 なぜいま、反グローバリズムなのか

知的な大人の勉強法 英語を制する「ライティング」 (講談社現代新書)

知的な大人の勉強法 英語を制する「ライティング」 (講談社現代新書)

日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)

日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)

本格保守宣言 (新潮新書)

本格保守宣言 (新潮新書)

変貌する民主主義 (ちくま新書)

変貌する民主主義 (ちくま新書)

農業問題: TPP後、農政はこう変わる (ちくま新書)

農業問題: TPP後、農政はこう変わる (ちくま新書)

なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか

なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか

出世力 なぜあなたの「頑張り」が認められないのか

出世力 なぜあなたの「頑張り」が認められないのか

人間はウソをつく動物である―保険調査員の事件簿 (中公新書ラクレ)

人間はウソをつく動物である―保険調査員の事件簿 (中公新書ラクレ)

自白の心理学 (岩波新書)

自白の心理学 (岩波新書)

仮説力を鍛える (ソフトバンク新書 51)

仮説力を鍛える (ソフトバンク新書 51)

ケインズ100の名言

ケインズ100の名言

対話でわかる 痛快明解 経済学史

対話でわかる 痛快明解 経済学史

無所属の時間で生きる (朝日文庫)

無所属の時間で生きる (朝日文庫)

わしの眼は十年先が見える: 大原孫三郎の生涯 (新潮文庫)

わしの眼は十年先が見える: 大原孫三郎の生涯 (新潮文庫)

部長の大晩年 (新潮文庫)

部長の大晩年 (新潮文庫)

「人間復興」の経済を目指して

「人間復興」の経済を目指して

官僚の反逆 (幻冬舎新書)

官僚の反逆 (幻冬舎新書)

日本経済論 「国際競争力」という幻想 (NHK出版新書)

日本経済論 「国際競争力」という幻想 (NHK出版新書)

ルソーを読む英国作家たち―『新エロイーズ』をめぐる思想の戦い

ルソーを読む英国作家たち―『新エロイーズ』をめぐる思想の戦い

ルソー (岩波現代文庫)

ルソー (岩波現代文庫)

いまこそハイエクに学べ: 〈戦略〉としての思想史

いまこそハイエクに学べ: 〈戦略〉としての思想史

中国のいまがわかる本 (岩波ジュニア新書)

中国のいまがわかる本 (岩波ジュニア新書)

成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―

成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―

現代社会論のキーワード―冷戦後世界を読み解く

現代社会論のキーワード―冷戦後世界を読み解く

性転換―53歳で女性になった大学教授 (文春文庫)

性転換―53歳で女性になった大学教授 (文春文庫)

家族の思想―儒教的死生観の果実 (PHP新書)

家族の思想―儒教的死生観の果実 (PHP新書)

歴史入門

歴史入門

「はてなダイアリー」から「はてなブログ」への引っ越し

更新を停止して6年ほどたちますが、かつて備忘録を兼ねた読書ノート(日記)を「はてなダイアリー」でつけていました。「はてなダイアリー」がサービス終了ということで、せっかく書いた文章が失われてしまうのがもったいない気がしましたので、「はてなブログ」(つまりここ)へ引っ越してきました。

読書ノートを書くのは自分の思考を整理できるとても楽しい作業でしたが、経済学部副学部長職(2010年10月~2012年9月)にある間は、多忙さゆえに更新頻度が激減し、職を解かれた直後に娘が誕生して(2012年10月)、更新に使える自由な時間がさらになくなりました。その状況は6年たっても基本的に変わっておらず、そのため、引っ越しと言っても過去データをインポートしただけです。今のところ更新を再開する予定(余裕)はなく、過去のエントリーの閲覧のみとさせていただきます。ただ、もしかしたら、月末に「今月はこんな本を読みました」という報告の書き込みくらいは行うかもしれません。

振り返ってみると、30代の乱読の蓄積が50代になった今の自分の研究生活を見えない力で支えてくれているような気がしてなりません。

小倉正行『TPPは国を滅ぼす』

読んだ順番の問題にすぎないのかもしれないが、廣宮孝信『TPPが日本を壊す』と中野剛志『TPP亡国論』を読んだ後では本書を読む必要はなかったように思われた。本書に書かれている内容(TPP参加反対の根拠)の大半は先の2冊に書かれており、目新しいところがない。*1新しい知見はほとんど得られなかった。本書のメリットを挙げるならば、TPPをめぐる国会での議論が記録されていることにある。叙述は平易で読みやすいが、これを読むのであれば、先の2冊のほうを読むべきだろう。

TPPは国を滅ぼす (宝島社新書)

TPPは国を滅ぼす (宝島社新書)

評価:★★☆☆☆

*1:ただし「食料主権」についてはやや詳しい叙述がある。

中野雅至『キャリア官僚の仕事力』

タイトル通りの内容。キャリア官僚の仕事力とそれを支える仕事術を元キャリア官僚が解説したもの。

本書の第一のキーワードは「締め切り」。キャリア官僚から学ぶべき最も汎用性の高い仕事術は、スケジュール管理の技術であるように思う。これが「仕事ができる/できない」という評価ポイントの一つであることは、自分の日々の仕事(教育・研究・校務)において、実感するところである。

官僚は雑務を含め、常に大量の仕事を抱えているのが実情だ。日本の公務員の人件費について問題視されることがたびたびあるが、実のところ日本の公務員数は世界的に見て最も少ない。官僚の世界は、慢性的に人手不足の状態なのだ。
そんな状態のなかで、官僚は常に「締め切り」と格闘している。・・・複数の仕事を同時に回すことのできないスケジュール管理の甘い官僚は、「できないヤツ」という烙印を押される。
締め切りを守るために大切なのは、段取りだ。
・・・締め切りを守るポイントは、「逆算」にある。締め切りというゴールとそのときにどういう成果を残さなければならないかを設定したうえで、仕事のプロセスを組み立てていくということだ。(pp.78-80)

官僚の仕事の実態を知るための読み物としても十分に面白い。本書の「締め切り」に次ぐキーワードは「ヤラセ」かも。

キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法 (SB新書)

キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法 (SB新書)

評価:★★★★☆

吉岡秀子『砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日』

コンビニ業界第二位のローソン。この巨大企業の社長に43歳の新浪が就任したのは2002年のこと。親会社の三菱商事から再建を託された。長年トップダウン方式でやってきて傾きかけたこの会社(ローソンはかつてはダイエーの傘下にあり、創業者である中内功の影響力が絶大だった)を根本から変える――指示待ちでなく「自分で考え、自分で動く」理想の社員像(p.14)を実現する――ために、新浪の奮闘が始まった。本書はその奮闘の記録である。

新浪はメディアへの露出度も比較的高いため、経営者としてはかなり著名な人物であるはずだ。本書の内容の半分くらいはDVD『プロフェッショナル 仕事の流儀 コンビニ経営者 新浪剛史の仕事 さらけ出して 熱く語れ [DVD]』を通じてすでに知っていたが、それでも本書は十分に面白い。まず新浪のどこまでも熱い言葉にしびれる。鼓舞される。男惚れしてしまいそうなほど。

新浪は社長就任当時のローソンを「砂漠だった」と回想している。「いろいろなことを考え、教え、水をたっぷりとまいても、何の芽も出ない砂地のようだった」(p.14)と。そこで彼は自分から社員との距離を縮めようと決めた。現場との密なコミュニケーションを通じて「自分で考え、自分で動く」社員を育成しようとしたのだ。しかし巨大企業であるためコミュニケーションのコストもまた巨大である。その弊害を打破するための様々な工夫・実践が本書で紹介されている。新浪の頭の中がコミュニケーションを密にするアイデアで満ちていることがよくわかる。彼は偉大なコミュニケーターであることを通じて、トップ(リーダー)に必要な資質や行動が何であるかを読者に具体的に教えてくれる。

本書の内容はもちろん以上に尽きるものでない。脱セブンイレブンのためのローソンの差別化戦略とは? 稼ぐことと社会貢献をどのように両立させるか? 読者は本書から多くを学ぶことをできるはずだ。

流通業界の進化を追いかけるのが昔(中高生時代)から大好きな僕にはたまらない一冊だった。やはりコンビニ業界は面白い。日本経済の「今」が見える。なお、著者は関大OGである。

砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日

砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日

評価:★★★★☆