乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

中野雅至『キャリア官僚の仕事力』

タイトル通りの内容。キャリア官僚の仕事力とそれを支える仕事術を元キャリア官僚が解説したもの。

本書の第一のキーワードは「締め切り」。キャリア官僚から学ぶべき最も汎用性の高い仕事術は、スケジュール管理の技術であるように思う。これが「仕事ができる/できない」という評価ポイントの一つであることは、自分の日々の仕事(教育・研究・校務)において、実感するところである。

官僚は雑務を含め、常に大量の仕事を抱えているのが実情だ。日本の公務員の人件費について問題視されることがたびたびあるが、実のところ日本の公務員数は世界的に見て最も少ない。官僚の世界は、慢性的に人手不足の状態なのだ。
そんな状態のなかで、官僚は常に「締め切り」と格闘している。・・・複数の仕事を同時に回すことのできないスケジュール管理の甘い官僚は、「できないヤツ」という烙印を押される。
締め切りを守るために大切なのは、段取りだ。
・・・締め切りを守るポイントは、「逆算」にある。締め切りというゴールとそのときにどういう成果を残さなければならないかを設定したうえで、仕事のプロセスを組み立てていくということだ。(pp.78-80)

官僚の仕事の実態を知るための読み物としても十分に面白い。本書の「締め切り」に次ぐキーワードは「ヤラセ」かも。

キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法 (SB新書)

キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法 (SB新書)

評価:★★★★☆