乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

後藤啓二『企業コンプライアンス』

著者は元警察官僚で現在は弁護士として活躍している。本書はそんな著者によるコンプライアンス経営に関する入門書である。ここ数年に発生した企業不祥事の実例(ライブドア三菱自動車雪印西武鉄道松下電器パロマ耐震強度偽装、ダスキンなど)を分析し、「企業が対応に直面している内部統制システムの整備について、その中核となるコンプライアンス及びリスク管理を企業の中でいかに浸透させていくか、あるいは危機発生時にいかに的確に対応していくか」(p.7)を解説している。

決してできの悪い本ではないのだが、國廣・五味『なぜ企業不祥事は、なくならないのか』*1という同系統の好著がすでに存在しており、それと比べると本書は見劣りする。記述が表面的かつ平板で、つっこみ力の不足を感じる。『なぜ企業不祥事は・・・』をすでに読んだ者なら本書を読む必要はないだろう。新しい知見を得られそうにないからだ。

企業コンプライアンス (文春新書)

企業コンプライアンス (文春新書)

評価:★★☆☆☆