ブログ記事の(過激な?)オピニオンで話題の著者だが、その著作物を読むのは今回が初めてである。なぜか今まで機会がなかった。
著者の思想的な立ち位置をほとんど知らないので偏見なしで読むことができたが、結論としては、ハイエク思想の入門書としてはかなり良い線を言っているように思う。主要著作・論文やキー概念の解説はおおむねきちんと押さえられている。ハイエク思想の発展史を彼の「制度設計」(pp.78-9, 133-4, 178-9, 189-90)についての考え方の変化と関連づけて手際よく解説してくれていることは、たいへんありがたい。*1ポパー、ケインズ、フリードマン、サッチャーといったハイエクの周辺の人物たちへの目配りも怠りない。
ただ、新書(しかもかなり薄手)という紙幅の制約もあって、詰め込みすぎの感は否めない。第三章の「社会主義との闘い」、第四章「自律分散の思想」、(インターネットとの関連に言及した)「おわりに」の後半部分ががやや読みづらかった。もっとも、これらのトピックについての僕の予備知識が乏しいだけなのかもしれない。
「ハイエクは保守主義者か」(pp.101-4)という問題は、目下僕が取り組んでいる問題でもあり、本書の中で唯一批判的に読んだ箇所である。この問題についての僕なりの解答は、後日、論文として発表する予定である。
疑問が一つ。フランク・ナイトは「オーストラリア学派の経済学者」(p.48)で正しいのだろうか?
- 作者: 池田信夫
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/08/19
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評価:★★★☆☆
*1:おそらく元ネタは、巻末の読書ガイドにも挙がっている、山中優『ハイエクの政治思想』なのだろう。http://d.hatena.ne.jp/nakazawa0801/20120817