3人の元参議院議員による鼎談を記録したもの。本書の趣旨はタイトルとは正反対で、本当にいらないと言っているわけではなく、今のようなお粗末な参議院ならいらないと憤っているのである。
3人は政治的・思想的立場を大きく異にしている(かつての所属政党はそれぞれ自民・民主・共産)けれども、参議院の本来あるべき姿については、ほぼ共通の見解を示している。参議院は良識の府であり、その本来の使命は、政局から独立して、教育・国防・外交といった国家の根幹にかかわる重要案件を長期的な視野からじっくり腰をすえて審議することにある、と。参議院は内閣を不信任することができないが、逆に内閣によって解散されることもなく、議員に6年という比較的長い任期が保障されているのも、上記のような使命を担っているからである。
したがって、2005年8月、参議院における郵政民営化法案の否決を衆議院の解散・総選挙によって無意味化しようとした小泉首相(当時)のやり方は、参議院の独立性を真っ向から否定したものであり、参議院を事実上死に至らしめたものであると、3人とも厳しく批判している。
本書が公刊されたのは4ヶ月ほど前の2007年5月である。7月に安倍内閣発足後初の参議院選挙を控え、3人とも「参議院を政局の具にするな」と強く主張しているが、結果は知っての通り。自民党の歴史的惨敗は安倍首相の辞任という政局の大変動をもたらしてしまった。
いったん死んでしまった参議院の存在意義をどうやって回復させるか? その道のりは平坦ではなさそうだ。
読み物としてはなかなか面白いのだが、その後の政局の大変動は本書の内容をはやくも古びたものに感じさせてしまう。最近の本の寿命って本当に短いのだなぁ。
- 作者: 村上正邦,筆坂秀世,平野貞夫
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/05
- メディア: 新書
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