乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

相原茂『はじめての中国語』

タイトル通り、中国語の入門書である。新書サイズなので、網羅的でありえないが、実に簡にして要領を得た入門書にできあがっている。ロングセラーになるわけだ。

十数年前、相原先生ご担当の「ラジオ中国語講座」を熱心に聴講した。そのかいあってか、文字から相原先生の声が自然と聞こえてくる。楽しく読み通せた。実は十数年ぶりの再読になるのだが、まったく記憶に残っておらず、初めて読む場合と変わりなかった。

初級文法の説明が実にうまい。相原先生は初級文法の要を「補語」の正確な理解に置いておられるようだ。英語の“I am a student.”はSVC構文だが、中国語の“我是学生。”はSVOの構文(「学生」は主格補語ではなく目的語)である。なるほど、なるほど。痒いところにまで手の届く説明だ。187ページ以下の様態補語「得」の説明は特に素晴らしい。信頼できる入門書である。

はじめての中国語 (講談社現代新書)

はじめての中国語 (講談社現代新書)

評価:★★★★★