乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

小山信康『貯金のできる人できない人』

9期ゼミのテキスト。T田さんの選定。

無駄遣いを減らすためには、何が無駄なのかを発見する必要がある。本書は「無駄遣いを減らすために日々の支出を記録(レコーディング)してみよう」と提言し、そのための具体的なノウハウを解説している。レコーディング・ダイエットの手法をそのまま貯金にも活かそうとしたものだ。

表面上は軽い読み物であるが、単なるハウツー本に終わらせない読み方も可能である。本書をもとに「投資とは何か?交際費が投資に相当するのはどのような場合か?」を考えてみると面白い。また、「時間を投資する」という考え方も重要だ。日々の時間の無駄遣いを減らして、空いている時間を将来のスキルアップのために有効活用する(156ページ以下)とは、つまるところ、現在の時間を将来のために投資することを意味する。収入を増やすために努力した時間というのは、たとえ今失敗したとしても、数年後の収入増に役立つはずだ。このような「時間を投資する」という考え方を手に入れることによって、我々は現在の失敗経験をポジティブにとらえなおすことができるはずだ。*1

正直に言うと、僕自身が本書から得るところはさほど多くなかった(普段から考えていることが大半だった)が、ゼミ生たちは多くを学んでくれたように見受けられた。

評価:★★☆☆☆

*1:僕の場合、チャレンジしては挫折することを繰り返し、少なくとも現時点では仕事で使えるレベルにまったく到達していない中国語・ロシア語・フランス語の勉強に充てた時間が、その「投資」にあたるだろう。