本書は産経新聞における連載記事「ブランドはなぜ墜ちたか」(2000年8月〜11月)を一書にまとめたものである。2000年に発生した3つの企業不祥事――雪印乳業の集団食中毒事件、大手百貨店そごうの経営破綻、三菱自動車工業のリコール隠し――が取材の対象となっている。単行本は2001年1月に公刊されたが、文庫化(2002年3月)にあたり、雪印乳業の子会社である雪印食品が起こした牛肉偽装事件の章が新たに追加された。
三菱自動車については、他の2つに比べると割かれたページ数が少なく、記事それ自体の練りこみもやや足りない感もあるが、本書全体としては、巨大ブランドが確立され崩壊の危機へと至るプロセスが関係者・同業他社・消費者などの声の紹介とともに克明にたどられており、たいへん読み応えがある。
いずれの場合にも共通しているのは、過度な楽観主義と事なかれ主義、必要な情報が流通しない硬直化した組織、危機管理能力の欠如である。
相次ぐ企業の不正事件を背景に、近年わが国においても企業倫理への関心が急速に高まってきている。事件の教訓を忘れないためにも、ぜひとも読み継がれて欲しい一冊である。
ブランドはなぜ墜ちたか―雪印、そごう、三菱自動車事件の深層 (角川文庫)
- 作者: 産経新聞取材班
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2002/03
- メディア: 文庫
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評価:★★★★☆