山椒は小粒でもぴりりと辛い、というのが本書を読んでの第一印象だ。人間が思考するの仕組み・プロセスを、以下のようなモデルに即して解説している。
- ①問題との出会い
- ②問題との取り組み
- ②-1解決
- ②-2解消(無効化)
- ③新たな問題の発見
野矢茂樹『はじめて考えるときのように―「わかる」ための哲学的道案内 (PHP文庫)』と主題を概ね共有しているが、『はじめて・・・』がどう転んでも純然たる哲学書であるのに対して、本書はそのようなカテゴライズがとても難しい。いろいろな読み方を許容してくれる摩訶不思議な本である。
例えば、就職を目前に控えた大学生であれば、「仕事ができる人/できない人」あるいは「クリエイティブな人/クリエイティブでない人」の根本的な違いはどこにあるのか、という関心から読むことができる。それは問題発見能力の違いに起因するわけだが、それでは問題発見能力とは何か? 詳しくは本書の107ページ以下を読んでいただきたいのだが、ここでは「(自分を含む)多くの人たちが当然視している前提・常識を疑う(+それをいったん棄て去る)力」とまとめておく。
中高生を主たるターゲットとする「プリマー新書」の一冊だが、中高校生が本書を読んでどのような感想を持つのか、まったく想像がつかない。受験という前提・常識を自由に疑うことが許される大学生になってから読むほうが、本書の真価を認めることできるのではないか。そんな気がする。
- 作者: 山本貴光,吉川浩満
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/12
- メディア: 新書
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評価:★★★☆☆