ナポレオンの生涯を描いた中編の評伝である。「あとがき」によれば、著者はナポレオンを「神の子」や「時代の子」として描くことに興味はなかった。「かねて気になる存在」であったこの人物の、「正体まで行かなくとも、ちらっとでも素顔を見てみたい」(pp.266-7)とのこと。
著者は、ナポレオンの天性の「集中力」、「率いる」ことへの飽くなき執念を、それらと背中合わせの「幼児性」とともに描き出す。そして、「コルシカ」や「共和制」といった大義を衣裳同然に取り替えていく態度に慨嘆する。同じ著者が『わしの眼は十年先が見える』*1で描いた大原孫三郎の生涯とのコントラストがたいへん興味深い。
- 作者: 城山三郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/04
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
評価:★★★☆☆