乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~

イギリス思想史を研究する大学教員の読書ノートです。もともとは自分自身のための備忘録として設置したものですが、「隠れ名著、忘れられた名著に関する情報を学生の皆さんに発信したい」というささやかな期待もこめられています。

2019年3・4月の読書の記録

トウ小平― 「富強中国」への模索 (現代アジアの肖像 4)作者: 天児慧出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1996/03/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る毛沢東 20世紀思想家文庫 15作者: 小田実出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1984/10メディア: 単…

2019年1・2月の読書の記録

横綱 (講談社文庫)作者: 武田葉月出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/01/13メディア: 文庫この商品を含むブログを見る毛沢東 (Century Books―人と思想)作者: 宇野重昭出版社/メーカー: 清水書院発売日: 2016/08/01メディア: 単行本この商品を含むブログを…

2018年11・12月の読書の記録

美のイデオロギー作者: テリー・イーグルトン,Terry Eagleton,鈴木聡出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 1996/04メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (5件) を見るヘイトスピーチ 「愛国者」たちの憎悪と暴力 (文春新書)作者: 安田浩一出…

2018年9・10月の読書の記録

崇高の美学 (講談社選書メチエ)作者: 桑島秀樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/05/09メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 33回この商品を含むブログ (14件) を見る悲しみよ こんにちは (新潮文庫)作者: フランソワーズサガン,Francoise Sagan,河野万里…

2018年7・8月の読書の記録

はじめての経済思想史 アダム・スミスから現代まで (講談社現代新書)作者: 中村隆之出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/06/21メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る大人のための国語ゼミ作者: 野矢茂樹出版社/メーカー: 山川出版社発売日: 2017…

2018年5・6月の読書の記録

子どもの難問作者: 野矢茂樹,熊野純彦,清水哲郎,山内志朗,野家啓一,永井均,神崎繁,入不二基義,戸田山和久,古荘真敬,柏端達也,柴田正良,鷲田清一,雨宮民雄,鈴木泉,渡辺邦夫,土屋賢二,斎藤慶典,大庭健,中島義道,一ノ瀬正樹,伊勢田哲治,田島正樹出版社/メーカー…

2018年3・4月の読書の記録

ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム (文春新書)作者: 谷口忠大出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/04/19メディア: 新書この商品を含むブログ (19件) を見る「帝国」化するイギリス―17世紀の商業社会と文化の諸相作者: 小野功生,大西晴樹出版社/…

2018年1・2月の読書の記録

教室内(スクール)カースト (光文社新書)作者: 鈴木翔,解説・本田由紀出版社/メーカー: 光文社発売日: 2012/12/14メディア: 新書購入: 6人 クリック: 111回この商品を含むブログ (38件) を見る現代中国入門 (ちくま新書1258)作者: 光田剛,鈴木将久,佐藤賢,池…

2017年1~12月の読書の記録

思い出せる範囲で・・・新版 論文の教室 レポートから卒論まで (NHKブックス)作者:戸田山 和久発売日: 2012/08/28メディア: 単行本(ソフトカバー)わけあり記者作者:三浦 耕喜発売日: 2017/06/15メディア: 単行本(ソフトカバー)不動産業界の人だけが知っ…

2016年1~12月の読書の記録

思い出せる範囲で・・・ミルトン (CenturyBooks―人と思想)作者: 新井明出版社/メーカー: 清水書院発売日: 1997/08メディア: 単行本この商品を含むブログを見るユートピアだより (岩波文庫)作者: ウィリアム・モリス,川端康雄出版社/メーカー: 岩波書店発売日…

2009~15年の読書の記録

思い出せる範囲で・・・新書376ゼロからわかる民法 (平凡社新書)作者: 川田昇出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2007/05/10メディア: 新書購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (13件) を見る市民社会とは何か (平凡社新書)作者: 植村邦彦出版社/メー…

「はてなダイアリー」から「はてなブログ」への引っ越し

更新を停止して6年ほどたちますが、かつて備忘録を兼ねた読書ノート(日記)を「はてなダイアリー」でつけていました。「はてなダイアリー」がサービス終了ということで、せっかく書いた文章が失われてしまうのがもったいない気がしましたので、「はてなブロ…

小倉正行『TPPは国を滅ぼす』

読んだ順番の問題にすぎないのかもしれないが、廣宮孝信『TPPが日本を壊す』と中野剛志『TPP亡国論』を読んだ後では本書を読む必要はなかったように思われた。本書に書かれている内容(TPP参加反対の根拠)の大半は先の2冊に書かれており、目新しいところが…

中野雅至『キャリア官僚の仕事力』

タイトル通りの内容。キャリア官僚の仕事力とそれを支える仕事術を元キャリア官僚が解説したもの。本書の第一のキーワードは「締め切り」。キャリア官僚から学ぶべき最も汎用性の高い仕事術は、スケジュール管理の技術であるように思う。これが「仕事ができ…

吉岡秀子『砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日』

コンビニ業界第二位のローソン。この巨大企業の社長に43歳の新浪が就任したのは2002年のこと。親会社の三菱商事から再建を託された。長年トップダウン方式でやってきて傾きかけたこの会社(ローソンはかつてはダイエーの傘下にあり、創業者である中内功の影…

廣宮孝信『TPPが日本を壊す』

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)問題を考えるための基本的論点を手際よく整理したたいへん便利な一冊である。タイトルが示すように、筆者は日本のTPP参加に反対の立場だが、その議論は意外に(失礼!)冷静で、好感が持てる。著者によれば、TPPの内容は…

小林時三郎『マルサス経済学の方法』

本書を紐解くマルサス研究者なら誰でも、44年前のわが国のマルサス研究の水準の高さに驚嘆するはずだ。他ならぬ自分のその一人である。B6版で240ページ。小著と言ってよい。エッセイ風の軽めの文体。だが、最初から最後のページまで、啓発力に富む議論が次々…

山中優『ハイエクの政治思想』

畏友山中さんの第一作をこのたび機会あって再読した。『隷従への道』から『自由の条件』を経て後年の『法・立法・自由』『致命的な思い上がり』にかけてのハイエクの議論を丁寧に読み解き、その力点の変化(義務論から帰結主義へ、帰結主義的義務論から義務…

正高信男『いじめを許す心理』

4回生(10期生)のTさんがいじめをテーマに卒論を書くというプランを提出していたので*1、指導者としての責任上、少しは勉強しておこうと思い、本書を手に取った。本書の主題は「なぜ、いじめが成立するのか」のメカニズムを解きほぐすことにある。より具体…

宇都宮浄人『鉄道復権』

欧州では、この二十年来、自動車に交通シェアを奪われてきた鉄道が見直され、高速鉄道の導入やLRT(次世代型路面電車)の拡大などによって大いなる復権をとげている。他方、日本の鉄道は、赤字のローカル線が次々と廃止されていることに象徴されるように、ジ…

池田信夫『ハイエク 知識社会の自由主義』

ブログ記事の(過激な?)オピニオンで話題の著者だが、その著作物を読むのは今回が初めてである。なぜか今まで機会がなかった。著者の思想的な立ち位置をほとんど知らないので偏見なしで読むことができたが、結論としては、ハイエク思想の入門書としてはか…

渡部昇一『自由をいかに守るか ハイエクを読み直す』

非専門家(英文学者・・・と言うよりは保守派の評論家or何でも屋?)によるハイエク『隷従への道』への入門書(コメンタール)。本書の評価は難しい。なるほど『隷従への道』という書物のエッセンスは表現できているかもしれない。 ハイエクがいいたかったの…

和田秀樹『「すぐれた考え方」入門』

第3章が「「複数の原因」を考える」と題されていたので、「マルサスの経済学方法論(特に複合原因論)の研究に使えるかも」と期待して本書を手に取ったのだが、残念ながら期待外れだった。その話題は本書にほとんど登場していない。また、著書を量産する著者…

産経新聞取材班『総括せよ!さらば革命的世代』

学生運動、とりわけ1968〜9年に最盛期を迎えた全共闘運動には、昔から強い関心を持っている。理由はいろいろだが、第1には、自分が1968年生まれであることが大きい。自分が生まれた頃に起こった出来事は、たとえ記憶に残っていなくても、その時代の空気を吸…

J. S. ミル『ミル自伝』

ジョン・ステュアート・ ミル(1806-73)は、19世紀イギリスの代表的思想家。百科全書的にあらゆる分野の知識に通暁した「普遍的知識人」として、『論理学体系』『経済学原理』『自由論』『功利主義論』『代議制統治論』『女性の隷属』などの多くの著作を残…

小島寛之『完全独習 統計学入門』

すでにレヴューした飯田泰之『考える技術としての統計学』*1で絶賛されていたので読んでみることにした。タイトルに偽りなし。これ以上望みようがないほど丁寧に説明がなされているので、独力で読み進めることができる。統計学という学問分野の性格上、数字…

西永良成『「超」フランス語入門』

2009年3月27日の日記*1にこう書いた。 新しい研究テーマとして今のところ以下の2つを考えている。1つは、フランツ・アントン・メスメル(ウィーン出身の医師で、催眠術によって神経症の治療を行ったことで有名)の生涯と思想を、フランス革命思想およびイギ…

飯田泰之『考える技術としての統計学』

バーク&マルサスについての研究書をまとめてから早いもので1年半が過ぎようとしている。この最初の単著では「保守主義」を切り口として両者の経済思想を統一的に把握しようと努めたが、これから先も同じ切り口で研究を続けたところで、生産性は低下していく…

マッド・アマノ『マッド・アマノの「謝罪の品格」』

著者はパロディ写真作家。 写真週刊誌『FOCUS』(新潮社、廃刊)の連載「狂告の時代」で広く知られる。本書はそんな著者が12年前から収集してきた300件超の「頭下げ(謝罪)会見」の写真入り新聞記事のコレクションの中から興味深い記事を厳選し、自身のコメ…

ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』

新自由主義(市場原理主義)のバイブルとして名高いフリードマンの主著の新訳。自由市場の利点を様々な角度から解き明かし、国家権力(政府)の市場への恣意的な介入を厳しく批判している。本書(初版)の公刊は1962年だが、「まえがき」によれば、本書のも…